文昌寺の除夜の鐘が・・・・聞こえる。幾つめの鐘の音だろう・・・
サザンの年末ライブが始まっている・・・・

なぜか・・・・大助が足を骨折をして入院していた時の姿や、
退院直後・・・中間試験を受けるために登校したとき
松葉杖をつき校門までの坂をゆっくり・・・
ゆっくり・・・・上り、
校舎に続く階段を休み・・休み・・息を切らして
一段・・・一段・・上がった。

他の生徒の足並みは早く大助を避けて通り過ぎた。
ゆっくり・・・休み休み・・・息を切らし・・・
階段を上がる。
がんばりやだった・・・大助

店のお客様で・・・・
9月に練習走行中転倒し、鎖骨骨折して入院した大学生さんに
学校欠席の遅れを取り戻すために大助は、
リハビリ室で勉強を見てもらっていた。

数学や英語の勉強している二人の姿が目に浮かぶ
中間試験は、試験を受けなくても平均点の点数はもらえると
担任から言われていたが
大助は保健室で一人・・・テスト用紙に向かった。

初冬に行われるマラソン大会も松葉杖をつきながら完走した。

入院中・・・弱音を吐かず、ワガママも言わず、
ほかの入院患者さんと和やかに一ヵ月半の入院生活を過ごした。

大助の眠る山寺の除夜の鐘は午前一時を過ぎて聞こえなくなった。
あっ・・・・聞こえた・・・・
大助は同級生たちと、お寺へ鐘をつきに行き響き渡る鐘の音を
聞いたはずだ。
新しい年、朝の明ける前に東に向かってバイクを走らせ
昇る朝日を見てきたと言いながら
鼻の頭を赤くして・・・切れるような寒さの中を帰ってきた。
私は年越しのぼんやりした頭の中に・・・
大助の晴れやかな笑顔を記憶している。
大助は愛機で走ることが大好きだった。

大助は、もう・・・「朝日を見に走ってきたよ」と頬を赤くして、
帰ってこない。

コツコツ取り組む子・・・あきらめない頑張り屋さん
そして、頑固なところがあったね。
誰も言わなくても・・・私は言いたい。
大助は・・・素晴らしい長男です。

慌しい世間の年の瀬に身を置いて・・・・車の移動中
突然、涙が噴出した。
生きて・・・残って・・・年を重ねる痛みが体中を襲った。





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追想・・・1998年12月31日・・・・